1.    現在、財務省の財政制度等審議会が、司法修習生の給費制の早期廃止を提言し、法曹養成検討会でも、事務局によって貸与制への移行を示唆するとりまとめが行なわれるなど、給費制廃止・貸与制移行の動きが本格化しようとしている。
     しかし、当会は、給費制の廃止に強く反対し、その堅持を求めるものである。
  2.  第1に、司法修習生の給費制は、戦後50余年にわたり、法曹三者の統一修習を行うことにより、法曹、とりわけ弁護士の公益性を経済的側面から支え、制度的に担保してきたものであり、これを廃止することは、基本的人権の擁護を使命とする法曹のあり方を変容させる危険性を孕んでいる。 
  3.   第2に、給費制の廃止は、法曹資格を経済的富裕者にのみ与える結果を招きかねない。即ち、新たな法曹養成制度においては、法曹を志す者は、法科大学院在学期間、修習期間を通じて、自ら収入を得ることができないばかりか、高額の経済的負担を強いられることになり、その結果、経済的理由によって法曹となることを断念せざるを得ない事態が懸念されるが、かかる事態は、法曹に多種多様な人材を求めるという司法制度改革審議会意見書の趣旨にも背馳するものである。 
  4.   第3に、司法修習生には、修習の実を挙げるため職務専念義務が課せられているが、かかる義務は質の高い法曹を養成するためにはやむを得ないものである。 
  5.   一方、国は、司法制度改革の一環として、質の高い法曹を養成するために財政上の措置を講じる義務があるのであるから、修習のために他に生計の手段を持たない司法修習生に対し、国が俸給を支給するのは当然のことであり、国の財政事情は、給費制廃止の正当な理由にはなりえない。
  6.   なお、給費制に代えて貸与制を採用すべきとの意見があるが、新人法曹が多額の負債を抱えて職務に従事することは、経済的利益に結びつかない弁護士としての各種公益活動や公益的職務に積極的に取り組む妨げとなるなど、大きな弊害を生じるおそれがあり到底容認できないものである。 
  7.   よって、司法修習生の給費制は今後も堅持されるよう、強く要望するものである。

2003年9月26日
島根県弁護士会
会長 錦織 正二