全面的な国選付添人制度の実現を求める総会決議

 2007年の少年法改正により導入された国選付添人制度は、極めて限定された対象事件について、家庭裁判所が必要と認めた場合に裁量により付すことができるにすぎず、家庭裁判所に送致され、観護措置決定を受けて身体拘束された少年に対する弁護士付添人選任率は未だ低率にとどまっている。

 少年審判手続きにおいて、弁護士付添人は、冤罪防止の観点はもとより、適正手続きの下、適正な保護処分に付するという観点からも、少年の更生を支援するという少年法の理念を実現するためにも不可欠の存在である。

 日本弁護士連合会及び全国の弁護士会は、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施するとともに、全ての弁護士会員から特別会費を徴収して基金を設置し、これを財源として、資力のない少年に付添人弁護士の費用を援助する少年保護事件付添援助事業を実施してきた。

 しかし、少年審判における適正手続きの保障、少年の更生に対する支援は、本来、国の責務であり、日本が批准している子どもの権利条約第37条は、「自由を奪われた全ての児童は、弁護人と接触する権利を有する」と規定しているところである。

 そこで、当会は、国に対し、少年法を速やかに改正し、国選付添人制度の対象を、少なくとも、家庭裁判所に送致され、観護措置決定により身体を拘束された全ての少年に拡大するよう求める。

 以上の通り決議する。

2011(平成23)年2月21日
島根県弁護士会定期総会

提案理由

  1.  少年は、成人に比して精神的に未成熟であり、被暗示性、迎合性が強いという特性をもっているため、虚偽の自白により冤罪が生じる危険性がある。自白事件であっても、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断を適正に行い、適正手続きに従った少年審判手続きを保障するために、弁護士付添人の関与は不可欠である。
     また、弁護士付添人は、少年の立場に立って事件をとらえ、被害弁償等被害回復の措置をとる、家庭・学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行うなどして、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
     少年たちの多くは、家庭で虐待を受け、あるいは、学校で疎外されるなど、どこにも居場所がなく、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至っている。少年審判において、そのような少年を受容・理解した上で、少年に対して法的・社会的な援助をし、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。
  2.   しかし、非行を犯したとして家庭裁判所の審判に付された少年は、2009年で年間63、541人であり、そのうち観護措置決定により身体拘束された少年は11、 2 233人に上るのに対し、弁護士である付添人が選任されたのは5、378人に過ぎない。
  3.  この間、日本弁護士連合会及び全国の弁護士会は、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施するとともに、全ての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として資力のない少年に弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助事業を拡充してきた。
     これにより弁護士付添人の選任数・選任率は、飛躍的に増加しているが、身体拘束を受けた少年の約40%に止まるというのは、成人の刑事手続において被告人の約98%に弁護人が付されていることと対比すると、極めて不十分といわざるを得ない。
  4.  このように弁護士付添人の選任率が低いのは、従来、国選付添人制度が存在せず、2007年11月に導入された国選付添人制度も、その対象事件が、① 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、② 死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪、という重大事件に限定され、しかも、「家庭裁判所が弁護士である付添人の関与が必要であると認めるとき」に裁量で付すことができる制度に止まっているからに他ならない。
  5.  2009年5月21日以降、いわゆる必要的弁護事件については、被疑者段階から国選弁護人を選任できることになったため、少年も、窃盗、傷害などの必要的弁護事件について、被疑者段階においては国選弁護人を選任できることになった。
     成人であれば、起訴されると同時に被告人国選弁護人が選任される。
     しかし、少年は、国選付添人制度の対象事件が極めて限定されているため、被疑者段階で国選弁護人が選任されながら、家庭裁判所に送致後は国選付添人が選任されず、弁護士付添人が関与しないまま審判手続きに臨まなければならないという事態が生じている。
  6.  少年審判における適正手続きの保障、少年の更生に対する支援は、本来、国の責務であり、日本が批准している子どもの権利条約第37条は、「自由を奪われた全ての児童は、弁護人と接触する権利を有する」と規定しているところである。
     少年鑑別所に収容された少年は、観護措置期間中身体拘束を受けるだけでなく、少年院送致や児童自立支援施設送致等の長期にわたり身体的拘束を伴う重大な処分を受ける可能性が高いのであり、前記のような弁護士付添人の活動による援助の重要性に照らすと、少なくとも、国選付添人制度の対象事件を、少年鑑別所に送致され身体拘束を受けた少年の事件全件にまで速やかに拡大すべきである。
  7.  当会は、2007年4月から、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を実施するとともに、2009年5月21日以降、被疑者国選弁護人が選任された事件については、家裁送致後も引き続き付添人として活動しうる態勢を整備しており、身体拘束を受けた全ての少年事件を対象とする国選付添人制度に対応することは十分可能であり、今後、少年に対してさらに充実した付添人活動が提供できるよう研修制度の充実等を図る所存である。
  8.  よって、国に対し、少年法を速やかに改正し、国選付添人制度の対象を、少なくとも、家庭裁判所に送致され、観護措置決定により身体を拘束された全ての少年に拡大するよう求める。
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