平成26年10月14日、政府は特定秘密の保護に関する法律(以下、「本法」という。)の施行令及び運用基準を閣議決定し、本法は同年12月10日に施行される予定である。

 しかし、以下に述べるとおり、本法は国民の知る権利、取材・報道の自由等に重大な脅威を与えるものであり、国民主権、基本的人権の尊重という憲法上の諸原理とも正面から衝突するものである。

 まず、本法は「特定秘密」の範囲や指定条件が不明確で、政府が「特定秘密」の指定を恣意的に行う危険性がある。この点について、閣議決定された運用基準では、「特定秘密」の範囲を更に具体化したと説明されているものの、その範囲はなお広範かつ極めて曖昧であることから、依然として恣意的な秘密指定がなされる余地がある。また、情報漏えいの処罰範囲が広くかつ刑罰も重いことから、実際には「特定秘密」に当たらない情報であっても、処罰を恐れて報道機関が取材や報道を差し控えるという「報道・取材への萎縮効果」も大きい。

 次に、本法には政府の「特定秘密」指定に対して、公正で独立した立場からその妥当性をチェックすることができる第三者機関が定められていない。この点については、運用基準においても何らの解決もなされないままである。

 さらに、本法では、「特定秘密」指定の日から5年を超えない範囲でその指定の有効期間を定めるとしているが、延長が可能であり、指定の有効期間は事実上無制限である。この点について、運用基準では、有効期間を延長するときにはその理由を明らかにすることなどが定められたが、その理由の妥当性の判断をチェックするのも行政機関であるから、指定の有効期間を定める実効性が乏しいことに変わりはない。

 加えて、本法は、適正評価を経た者に「特定秘密」の取扱いをさせることにしているが、この適正評価制度については、評価対象者やその家族等のプライバシーが侵害される恐れが強く、この点についても、運用基準によって解決されるものではない。

 そもそも、本法は、上記のような重大な問題点を有するにもかかわらず、政府は国民に対して十分な説明もせず、国民的な議論が尽くされないまま、唐突に制定されたものであり、民主主義国家における主権者の信任を得た法律とは到底言えない。本法の制定後、施行令(案)及び運用基準(案)等について実施されたパブリックコメントでも、2万3820件もの意見が寄せられたにもかかわらず、内容は殆ど変らないまま閣議決定されており、施行令及び運用基準を総合しても、本法の問題点は依然として何ら解消されていない。

 当会は、既に昨年11月21日付会長声明において本法に反対する立場を表明しているが、本法の施行予定日を前に、改めて、本法の施行に強く反対し、本法の廃止を求めるものである。

2014(平成26)年12月8日
島根県弁護士会
会長 射場 か よ 子