平成26年6月26日、大阪拘置所において1名に対する死刑の執行が行われた。谷垣禎一法務大臣は、一昨年12月に就任して以降5回(9名)もの死刑執行を命じたことになる。

 死刑は、かけがえのない生命を奪い、人間の存在を完全に否定するという非人道的な刑罰であり、また、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪うという取り返しのつかない刑罰である。いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という4つの死刑確定事件における再審無罪、いわゆる足利事件、布川事件における無期懲役刑確定事件の再審無罪判決が示すとおり、死刑判決を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。本年3月に死刑確定事件である袴田事件の再審開始決定がなされたことは、死刑事件であっても冤罪の疑いの強い事件があること、そして刑事裁判が完全なものではないことを改めて証明した。

 日本弁護士連合会においては、死刑のない社会が望ましいことを見据えて、平成23年10月7日、第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的な議論を呼びかける宣言」を採択し、平成25年2月12日、谷垣禎一法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出した。

 当会としても、平成25年2月21日に3名に対して行われた死刑執行、同年4月26日に2名に対して行われた死刑執行、同年9月12日になされた1名に対する死刑執行、同年12月12日に2名に対して行われた死刑執行に対し、各死刑執行後、これらに強く抗議し、併せて死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しに関して広く国民に開かれた議論が尽くされるまでの一定期間、死刑執行を停止するよう求める旨の会長声明を発してきた。再三に亘る要請を無視してなされた今回の死刑執行は、当会としても到底容認できない。

 当会は、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む国民的議論を開始し、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

2014(平成26)年7月1日
島根県弁護士会
会長 射場 か よ 子