島根県弁護士会では、本年8月28日、次のとおり総会決議を行いました。

  1. 「安全保障関連法案」とは
     今、国会審議中の「安全保障関連法案」とは、国際平和支援法という新しい法律の制定案と、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、PKO協力法など計10本の既存の法律の改定案を合わせた法案です。  
     全部で11本の法律を改定する法案のため、問題点も法律ごとに様々にあります。その中でも特に問題なのは、「集団的自衛権の行使容認」と「自衛隊による他国軍隊の後方支援の拡大」の問題です。

  2. 「集団的自衛権」は憲法違反です  
     日本国憲法の基本原理は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」です。
     「平和主義」について、日本国憲法第9条は、「戦力」すら持ってはならないという徹底した原則を定めています。そのため、外国から日本が武力攻撃を仕掛けられた場合に、日本が武力を用いて反撃すること(個別的自衛権)が憲法上許されるかについては、長年、議論され、一定の方向性が示されてきました。
     しかし、外国間で起きた武力紛争に、日本が武力で介入し、他国を防衛すること(集団的自衛権)は、たとえ友好国を助けるためであっても憲法違反であることは、議論する余地なく、国民共通の理解だったはずです。歴代政府も、集団的自衛権の違憲性を当然のこととして論じてきましたし、現在も、大多数の憲法学者が明らかな憲法違反だと述べています。

  3. 内閣総理大臣、国会議員は、憲法を守る義務を負っています  
     そもそも憲法とは、国家権力が濫用され、国民の「基本的人権」が侵害されることのないよう、内閣総理大臣や国会議員の行動を制限するためのものです。この原則を「法の支配」や「立憲主義」と呼びます。
     内閣総理大臣や国会議員は、憲法の範囲内で政治をする義務を負っています。もちろん、安全保障の問題も例外ではありません。憲法に違反する法律を定めることは許されません。

  4. 「必要だから」は憲法に反する立法をしていい理由にはなりません
     日本の平和と安全のため、今すぐに「集団的自衛権」が必要だという意見があります。 しかし、従来、一切認められないと考えられてきた集団的自衛権について、一部でも行使を認めるということは、法的安定性を害し、憲法の基本原理である「平和主義」の内容を大きく変えるということです。
     憲法の基本原理である「平和主義」の内容を変更するかどうかを決めることができるのは、内閣でも、国会議員でもなく、一人一人の国民です。それが「国民主権」です。そのため、日本国憲法第96条は、憲法改正には「国民投票」が必要だと定めています。
     内閣の閣議決定や国会議員の多数決で制定した法律によって、憲法の基本原理を事実上変えてしまう行為は、主権者である国民を無視する行為で、許されません。

  5. 後方支援の拡大にも憲法違反の問題があります  
     集団的自衛権とは別の問題として、後方支援の拡大が、憲法違反の武力行使につながる危険性の問題もあります。  
     法案では、「世界中どこででも」、「現に戦闘行為が行われている現場以外」であれば、アメリカ軍に限らない他国軍隊に対して、弾薬の提供や戦闘準備中の航空機への給油等までを含む支援活動ができることとされています。しかし、現に戦闘は行われていないけれど、戦場になる可能性のある地域において、自衛隊が他国軍隊を支援し、支援を受けた他国軍隊が武力の行使をすれば、「自衛隊と他国軍隊が一体となって武力行使をした」ことになり、憲法違反の武力行使につながる危険性があります。  
     PKO協力法の改定案における「駆け付け警護」なども、自衛隊が、憲法違反の武力行使をする危険性をはらんでいますが、今の国会では、多くの疑問点が一まとめに議論されてしまっていることも問題です。

  6. だから島根県弁護士会は「安全保障関連法案」に反対し、廃案を求めます  
     島根県弁護士会は、閣議決定や法律制定による集団的自衛権行使容認について、これまでにも、総会決議、会長声明、意見広告などで反対してきました。また、島根県弁護士会の歴代会長も反対を表明しました。日本弁護士連合会や他県の弁護士会も同様の意見を表明しています。 

2015(平成27)年8月28日
島根県弁護士会総会