1.「安全保障関連法」とは

 「安全保障関連法」とは、国際平和支援法という新しい法律の制定と、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、PKO協力法など計10本の既存の法律の改定からなるものです。
 この「安全保障関連法」の採決の強行が、7月16日の衆議院につづき、9月19日には参議院でもなされました。
 島根県弁護士会は、この採決の強行に強く抗議し、「安全保障関連法」の可決に反対します。
 「安全保障関連法」は、全部で11本の法律の制定・改定にわたるため、問題点も法律ごとに様々にあります。その中でも特に問題なのは、「安全保障関連法」が「集団的自衛権の行使容認」と「自衛隊による他国軍隊の後方支援の拡大」を定めている点です。

2.「集団的自衛権」は憲法違反です  

 日本国憲法の基本原理は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」です。
 「平和主義」について、日本国憲法第9条は、「戦力」すら持ってはならないという徹底した原則を定めています。そのため、外国から日本が武力攻撃を仕掛けられた場合に、日本が武力を用いて反撃すること(個別的自衛権)が憲法上許されるかについては、長年、議論され、一定の方向性が示されてきました。
 しかし、外国間で起きた武力紛争に、日本が武力で介入し、他国を防衛すること(集団的自衛権)は、たとえ友好国を助けるためであっても憲法違反であることは、議論の余地なく、国民共通の理解だったはずです。歴代政府も、集団的自衛権の違憲性を当然のこととして論じてきましたし、大多数の憲法学者、元内閣法制局長官、元最高裁判所長官らが、明らかな憲法違反だと繰り返し述べてきました。

3.憲法違反の法律は無効です

 日本国憲法第98条第1項は、憲法に違反する法律は効力を有しないと定めています。
 集団的自衛権の行使容認を定める「安全保障関連法」は、憲法違反であることから、無効です。
 憲法に違反する「安全保障関連法」に基づいて行われる自衛隊の活動も憲法違反となります。「安全保障関連法」に基づいて、自衛隊を海外に派遣することもできません。

4.内閣総理大臣、国会議員は、憲法を守る義務を負っています  

 そもそも憲法とは、国家権力が濫用され、国民の「基本的人権」が侵害されることのないよう、内閣総理大臣や国会議員の行動を制限するためのものです。この原則を「法の支配」や「立憲主義」と呼びます。
 内閣総理大臣や国会議員は、憲法の範囲内で政治をする義務を負っています。もちろん、安全保障の問題も例外ではありません。憲法に違反する法律を定めることは許されません。

5.「必要だから」は憲法に反する立法をしていい理由にはなりません  

 日本の平和と安全のため、今すぐに「集団的自衛権」が必要だという意見により、「安全保障関連法」は国会で可決されました。
 しかし、従来、一切認められないと考えられてきた集団的自衛権について、一部でも行使を認めるということは、法的安定性を害し、憲法の基本原理である「平和主義」の内容を大きく変えるということです。
 憲法の基本原理である「平和主義」の内容を変更するかどうかを決めることができるのは、内閣でも、国会議員でもなく、一人一人の国民です。それが「国民主権」です。そのため、日本国憲法第96条は、憲法改正には「国民投票」が必要だと定めています。
 内閣の閣議決定や国会議員の多数決で制定した法律によって、憲法の基本原理を事実上変えてしまう行為は、主権者である国民を無視する行為で、許されません。

6.後方支援の拡大にも憲法違反の問題があります  

 集団的自衛権とは別の問題として、後方支援の拡大が、憲法違反の武力行使につながる危険性の問題もあります。  
 安全保障関連法では、「世界中どこででも」、「現に戦闘行為が行われている現場以外」であれば、アメリカ軍に限らない他国軍隊に対して、弾薬の提供や戦闘準備中の航空機への給油等までを含む支援活動ができることとされています。しかし、現に戦闘は行われていないけれど、戦場になる可能性のある地域において、自衛隊が他国軍隊を支援し、支援を受けた他国軍隊が武力の行使をすれば、「自衛隊と他国軍隊が一体となって武力行使をした」ことになり、憲法違反の武力行使につながる危険性があります。  
 PKO協力法に追加された「駆け付け警護」なども、自衛隊が、憲法違反の武力行使をする危険性をはらんでいますが、国会では、多くの疑問点が一まとめに議論されてしまい、議論が深まらないままに採決が強行されてしまいました。

7.島根県弁護士会は「安全保障関連法」可決に反対し、今後も活動を続けていきます  

 島根県弁護士会は、閣議決定や法律制定による集団的自衛権行使容認について、これまでにも、総会決議、会長声明、意見広告、集会・デモ行進などで反対してきました。また、島根県弁護士会の歴代会長も反対を表明しました。今後もこの法律の問題点と違憲性を訴え続けていきます。

2015(平成27)年9月19日
島根県弁護士会
会長 熱田 雅夫