「共謀罪」の新設に断固反対する会長声明

2015(平成27)年3月31日

 過去3度も廃案となった「共謀罪」の創設を柱とする組織的犯罪処罰法改正案(以下「法案」という。)を、政府は、改めて今秋予定される臨時国会に提出する方針であると報道されている。

 既に当会は、この「共謀罪」は、基本的人権を侵害し、捜査権の濫用を助長するものとして、2005(平成17)年8月5日及び2006(平成18)年5月17日に、その問題点を指摘した上で、法案に反対する会長声明を発しその危険性を訴えてきた。

 過去に廃案となった「共謀罪」は、長期4年以上の刑を定める犯罪について、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」を対象とするもので、「共謀罪」が成立する犯罪は窃盗、横領、背任、公職選挙法違反など600を超える。

 このような犯罪の実行行為がなくとも合意をしただけで処罰をする「共謀罪」は、個人の行為ではなく意思や表現を処罰するものであり、犯罪意思だけでは処罰しないとする近代刑法の基本原則に反する。それのみならず、意思形成段階を処罰の対象とすることにより、国民の思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権を侵害する危険性が極めて強いものである。

 更に、「共謀罪」の謀議の立証のためには、自ずと、国民の会話、電話、ファックス、メール、SNS等を捜査の対象とすることにならざるをえず、その結果、国民のプライバシーが侵害されるとともに、自白の強要、或いは現在検討されている司法取引による密告、おとり捜査などが実施され、憲法が保障する適正手続が害される危険も増大する。

 政府は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下「条約」という。)を批准するために、「共謀罪」を新設しなければならないと説明している。しかし、条約では、「自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置をとる。」と説明され、組織犯罪に関連する重大犯罪について未遂以前に処罰する規定があれば、条約を批准することは可能である。既に我が国の刑法等においては、組織的犯罪集団による犯行が予想される重大な主要犯罪について、予備罪及び陰謀罪が規定されていることに加え、判例理論として共謀共同正犯理論が確立しており、その当否はともかく、組織犯罪について広範な共犯処罰が可能となっている。これらの事情により、我が国において、組織的犯罪集団の関与する犯罪行為について、条約を批准するために、政府が提案するような「共謀罪」を新設する必要性はない。

 以上のとおり、「共謀罪」は、近代刑法の基本原則に反し、基本的人権を侵害し、適正手続に違反するなど、極めて問題と危険性が多いものである。

 よって、当会は、「共謀罪」の新設には断固反対であることを重ねて表明する。 

2015(平成27)年3月31日
島根県弁護士会  
会長 射場 かよ子

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