1.  司法試験に合格し、司法研修所に入所した司法修習生は、現在1年6月の修習を経て裁判官、検察官、弁護士となり、司法の現場を担うこととなっている。司法修習生に対しては国から給与が支給されている。ところが、政府の司法制度改革推進本部は、去る6月15日、給与を支給する制度(給費制)を廃止し、2006(平成18)年度から一定額を無利子で貸す制度(貸与制)を導入する方針を固めた。  
  2.   司法修習生は修習以外の業務に従事することは原則として禁止され、専ら修習に励むことが義務付けられているが、それは高度の専門的能力と職業倫理を兼ね備えた質の高い法曹を養成する為である。
  3.   給費制がなければ経済的に恵まれない者は修習期間中の生活維持が困難となり、法曹への道を閉ざされかねない。それでは裕福な者のみが法曹資格を得ることとなり、公平性に欠け、広範な国民のなかから人材を確保することができず、質の高い法曹の養成は期待できない。とりわけ、法科大学院を卒業した者のみが司法試験の受験資格を得ることとなる新しい法曹養成制度においては、4年間の大学生活、3年間の法科大学院学生を経て、更に1年の司法修習期間を通じて多大の経済的負担を強いられるというケースが予想される。
  4.   医師養成制度においては、本年4月卒業後臨床研修が義務化された半面、国費が研修指定病院を経て研修医に支給されることとなった。国民の生命、健康を守る医師の役割からして質の高い医師を養成する為、研修に専念することを経済的に支援しようとするものである。 
  5.  社会生活上の医師としての弁護士を含む法曹三者にも同様の制度が堅持されるべきである。それにより法曹の質が維持され、国民の社会生活の隅々にまで法の支配が及んで正当な権利が守られることとなる。 
  6.  よって、島根県弁護士会は給費制の堅持を強く求めるものである。

  以上決議する。

2004(平成16)年7月26日
島根県弁護士会
会長  中村 寿夫