今国会において、「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」が上程審議されている。そして、その法案においては、「共謀罪」の新設が規定されている。「共謀罪」は、長期4年以上の刑を定める犯罪について、「団体の活動として」「当該行為を実行するための組織により行われるもの」の「遂行を共謀した者」を処罰するものとしている。即ち、「共謀罪」は、犯罪の実行の着手はおろか、予備行為もない段階で、犯罪を行う意思を合致させただけで処罰しようとするものである。現刑法では、予備罪すら、殺人や放火等の重大犯罪に限られているのに、この「共謀罪」においては、更にその前段行為である共謀についての処罰対象を、窃盗、横領、背任、公職選挙法違反など600以上もの犯罪に拡大している。 このような「共謀罪」は、犯罪の意思のみの段階では処罰しないという刑法の大原則に反することになるのみならず、意思形成段階を処罰の対象とすることにより、国民の思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由などの憲法上の基本的人権を侵害する可能性が極めて強いものである。

 更に「共謀罪」は、自ずと、市民の会話、電話、ファックス、メール等を捜査対象とすることにならざるをえず、その結果、国民のプライバシーが侵害され、又、盗聴も常態化する危険性があると共に、合意の成立を立証するため、自白偏重の捜査がなされることも懸念される。

 そして、「共謀罪」の運用によっては、政党、NPOなどの市民団体、労働組合などの諸活動も規制されかねない。 このように「共謀罪」は、基本的人権を侵害し、捜査権の濫用を助長するものであって、到底是認できるものではない。

 よって、当会は、「共謀罪」の新設に断固反対するものである。

2005(平成17)年8月5日
島根県弁護士会
会長  吾郷 計宜