1.  4月10日、東京拘置所及び大阪拘置所において各2名、合計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
     
  2.  死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降毎年、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、同決議の中で日本など死刑存置国に対し、「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野にいれ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行なった。
     このような状況の中、死刑廃止国は着実に増加し、2008年2月20日現在、死刑存置国62カ国に対し、死刑廃止国135カ国と、死刑廃止が国際的な潮流となっている。
      昨年5月18日に示された国連の拷問禁止委員会による日本政府報告書に対する最終見解・勧告において、日本の死刑制度の問題が端的に示された上で、死刑の執行を速やかに停止すべきことが勧告された。昨年12月18日には、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数で採択された。
     
  3.  4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)の再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかになった一方で、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点については抜本的な改善が図られておらず、誤判の危険性は依然不可避のままである。
     また、死刑と無期懲役の量刑について、明確な判断基準が存在せず、裁判所によって判断が別れる事例が相次いでいる。
     死刑確定者が置かれた状況や死刑執行の実態に関する情報開示も乏しい。
     2009年から開始される裁判員制度においては、裁判員も死刑を含む量刑判断に参加することとなっており、今こそ、十分に情報を公開した上で、死刑という究極の刑罰が許容されるべきか否かについて、広く国民的な議論がなされることが望まれている。
     
  4.  日本弁護士連合会は、2002年11月、「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき、国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行なうまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱した。
      しかるに、昨年12月及び本年2月に続き、極めて短期間のうちに今回死刑執行がなされたことは、誠に遺憾である。
      当会は、政府に対し、死刑制度の存廃につき、国民的議論を尽くし、死刑制度に対する見直しを行なうまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう強く要請するものである。

2008年4月14日
島根県弁護士会
会長  水野 彰子