本年7月28日、大阪拘置所において2名、東京拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。

 昨年は合計15名に対し死刑が執行されており、本年も1月に4名の執行がなされ、今回の執行はこれに続くものであって、連続した多数の死刑執行に対し、強く抗議するものである。

 我が国では4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定している。また、本年6月23日にはいわゆる足利事件において、無期懲役判決の決め手となったDNA鑑定が精度の低いものであることが明らかとなり再審開始決定がなされており、同種のDNA鑑定により死刑判決が確定して昨年10月に死刑が執行された飯塚事件にも関心が集まっている。死刑事件にも誤判があることが明らかとなっていながら、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点については抜本的な改善が図られておらず、誤った死刑の危険は依然存在する。

 本年5月には裁判員制度が実施され、一般市民も死刑を含む量刑判断に参加することとなり、死刑制度に対する関心もかつてないほど高まっているところである。

 死刑の廃止が世界的潮流となっている中、我が国が死刑制度を存置し、死刑執行を継続していることに対し国際社会からは強い懸念が表明されている。

 昨年5月の国連人権理事会第2回普遍的定期的審査では我が国における死刑執行の継続に対する懸念が多数表明され、6月には日本政府に対し死刑執行の停止が勧告された。同年10月の国際人権(自由権)規約委員会による我が国の人権状況に関する審査においても、死刑制度の問題点を指摘するとともに制度の抜本的見直しを行うよう求める勧告がなされた。そして、同年12月8日の国連総会本会議において、全ての死刑存置国に対し死刑執行の停止を求める決議が一昨年を上回る圧倒的多数の賛成で採択された。

 このような国際社会の要請に応えることなく、死刑制度に関する国民的議論を行うこともなく、今回の死刑執行が行われたことはきわめて遺憾であり、当会は、政府に対して強く抗議するとともに、改めて、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑執行を停止するよう、重ねて要請するものである。

2009(平成21)年8月11日

島根県弁護士会                 
会長 大野 敏之