選択的夫婦別姓や非嫡出子の相続差別撤廃を盛り込んだ民法改正案は、1996(平成8年)に法制審議会において決定され、法務大臣に答申されているにもかかわらず、現在に至るも、民法改正は実現していない。しかし、家族法部分に関する民法改正は、いまや喫緊の課題である。

 まず、現在の夫婦同姓制度の下、改姓を余儀なくされる者は、職業上・社会生活上さまざまな不利益を被っているが、婚姻に際し96%の夫婦が夫の氏を選んでいる現状においては、不利益を被っている殆どは女性である。このような現状は、女性の社会進出が進む中、真の両性の平等と男女共同参画社会を実現する上で早急に改善されなければならない。婚姻後も自己のアイデンティティとしての氏を継続して使用する権利は、氏名が人格権の一部を構成すること(最高裁昭和63年2月16日判決)に鑑み、法制度上も十分に尊重されなければならず、選択的夫婦別姓制度は、憲法13条の趣旨に合致するとともに、夫婦が同等の権利を有することを基本とすると定める憲法24条の趣旨にも合致するものである。他方、同制度は選択制であって、夫婦同姓を望む個人の権利に何らの影響を及ぼすものでもない。2006(平成18)年に内閣府が行った調査によれば、60歳未満の年齢層では、選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対する者を上回っており、選択的夫婦別姓の導入には、社会的な合意形成もなされているというべきである。

 また、現行民法は、婚外子の相続分を婚内子(嫡出子)の2分の1と定めているが、これは父母が婚姻をしているか否かという、子自身の意思や努力ではいかんともし難い事実をもって差別するものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかであり、日本が1994(平成6)年に批准した子どもの権利条約2条が禁止する「出生による差別」にも該当するものである。最高裁判決においても、相続分差別を撤廃すべきであるという意見が何度も述べられている。

 日本における民法(家族法)改正の遅れは、国連でも繰り返し問題にされてきている。特に、2009(平成21)年、女性差別撤廃委員会は、家族法改正を最優先課題として指摘し、その実施に関する書面での詳細な情報を2年以内に提出するよう要請し、早期の法改正を厳しく勧告している。

 当会は、今期通常国会において、選択的夫婦別姓の導入を初めとする家族法改正が速やかに実現されることを強く求める。

2010(平成22)年3月16日
島根県弁護士会
会長  大野 敏之