弁護士付添人は、少年審判において、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。少年たちの多くは、家庭で虐待を受け、あるいは、学校で疎外されるなど、どこにも居場所がなく、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至っている。少年審判において、そのような少年を受容・理解した上で、少年に対して法的・社会的な援助をし、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、少年の更生にとって極めて重要である。

 しかし、非行を犯したとして家庭裁判所の審判に付された少年は、2009年で、年間63,541人であり、そのうち観護措置決定により身体拘束された少年は11,233人に上るのに対し、弁護士である付添人が選任されたのは5,378人に過ぎない。

 この間、日本弁護士連合会及び全国の弁護士会は、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施するとともに、全ての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を設置し、これを財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充してきた。これにより弁護士付添人の選任数・選任率は、飛躍的に増加しているが、身体拘束を受けた少年の約40%に止まるというのは、成人の刑事手続において被告人の約98%に弁護人が付されていることと対比すると、極めて不十分といわざるを得ない。

 このように弁護士付添人の選任率が低いのは、従来、国選付添人制度が存在せず、2007年11月に導入された国選付添人制度の対象事件も、重大事件に限定され、しかも、家庭裁判所が必要と認めた場合に裁量で付すことができる制度に止まっているからに他ならない。

 しかも、昨年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件がいわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたことにより、被疑者段階の少年に国選弁護人が選任されながら、家庭裁判所に送致後は国選付添人に選任されないという事態が生じている。

 子どもの権利条約第37条は、「自由を奪われた全ての児童は、弁護人と接触する権利を有する」と規定している。しかも、少年鑑別所に収容された少年は、少年院送致や児童自立支援施設送致等の重大な処分を受ける可能性が高い。したがって、前記のような弁護士付添人の活動による援助の必要性に照らすならば、少なくとも、国選付添人制度の対象事件を、少年鑑別所に送致され身体拘束を受けた少年の事件全件にまで拡大すべきである。

 当会は、2007年4月から、当番付添人制度を実施するとともに、昨年5月21日以降、被疑者国選弁護人が選任された事件については、家裁送致後も引き続き付添人として活動しうる態勢を整備しており、身体拘束を受けた全ての少年事件を対象とする国選付添人制度に対応することは十分可能であり、今後、少年に対してさらに充実した付添人活動が提供できるよう研修制度の充実等を図る所存である。

 政府においては、速やかに、国選付添人制度の対象事件を身体拘束全件にまで拡大する少年法改正を行うべきである。

2010(平成22)年5月26日
島根県弁護士会
 会長 中村 寿夫