7月28日、東京拘置所において2名の死刑確定者に対し、死刑が執行された。
 昨年9月に千葉景子法務大臣が就任して以来、初めての死刑執行である。

 千葉法務大臣は、就任直後、死刑の執行は人命にかかわる問題ゆえに慎重に取り扱っていきたい旨述べていた。にもかかわらず、この間、死刑執行や死刑確定者の処遇に関する情報公開も国民的議論も何らなされないまま、今回の死刑執行に至ったことに対し、当会は、強く抗議するものである。

 国際人権(自由権)規約委員会は、2008(平成20)年10月、日本政府に対し、世論調査の結果にかかわらず、死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきであることを勧告するとともに、必要的上訴制度の導入、再審等による執行停止等、死刑制度を巡る抜本的な制度改革を行うことを求めた。

 このような中、2009(平成21)年5月からの裁判員制度の実施に伴い、一般市民が死刑判決に関わる可能性が生じており、市民に対して死刑制度の運用実態を広く開示し、死刑制度に関する議論を深めていく必要性がますます高まっている。

 報道によれば、千葉法務大臣は、死刑執行後の記者会見において、法務省内に死刑執行に関する勉強会を立ち上げ、また、東京拘置所の刑場を報道機関に公開すること指示したとのことである。

 当会は、これまで、再三にわたり、政府による死刑執行に抗議し、死刑執行の停止を求めてきたところであるが、今回の死刑執行を受けて、政府に対し、法務省内に設置される勉強会を、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しに関する、真に、広く国民に開かれた議論の場とするよう、求めるとともに、改めて、かかる議論が尽くされるまでの一定期間、死刑執行を停止するよう、強く求めるものである。

2010(平成22)年8月3日
島根県弁護士会
会長  中村 寿夫