法科大学院制度の創設から9年近くが経過し,新しい法曹養成制度は,様々な課題に直面している。

 とりわけ,司法試験合格率の低迷と法科大学院入学志願者の減少が顕著であることから,文部科学省は,深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的な組織見直しを促進するための公的支援の見直しとして,入学者選抜における競争倍率と司法試験の合格率を指標とする国立大学運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の削減に踏み切った(2012〔平成24〕年,入学定員の充足状況を新たな指標として追加)。

 このような中,さらに,政府の法曹養成制度検討会議は,法科大学院の統廃合や定員削減に向けた具体的な基準案を検討することを決定した。基準の策定に当たっては,地域的なバランスについても考慮することとされているものの,同会議の前身である法曹の養成に関するフォーラムや,総務省による「法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価」等,政府の従前の検討経過において,法科大学院の地域適正配置が重視されてきたとは言い難い。このため,統廃合の基準の策定に当たり,地域適正配置の理念に十分な配慮がなされるとは限らない。 

 しかしながら,法の支配をあまねく実現するためには,各地の様々な分野から法曹を生み出すことが重要であり,そのためには,もともと司法改革審議会意見書が制度設計の基本的考え方として指摘していたとおり,法科大学院を全国に適正配置し,地方在住者がその地域で教育を受けて法曹になる機会を実質的に保障することが,司法制度改革の目的に直結する理念として重要である。そして,地方法科大学院の存在が地元志望者の経済的負担を大きく軽減させるだけでなく,司法過疎の解消,地域司法の充実・発展に貢献し,さらには,地方自治・地方分権を支える人材を育成するという観点からも重要な役割を担っていること等を併せて考えれば,法科大学院の統廃合等は,地域適正配置の理念を踏まえつつ実施される必要がある。

 よって,国に対し,統廃合の基準の策定等法曹養成制度の在り方を検討するに当たり地域適正配置の理念を最大限に尊重すること,地方法科大学院について国立大学法人運営費交付金又は私立大学等経常費補助金を減額しないこと,及び地方法科大学院に対して適正な公的支援を行うことを強く求める。

2013(平成25)年1月28日

静岡県弁護士会
会長 渥美 利之
長野県弁護士会
会長 林   一樹
新潟県弁護士会
会長 伊藤 秀夫
広島弁護士会
会長 小田 清和
島根県弁護士会
会長 水野 彰子
熊本県弁護士会
会長 坂本 秀德
鹿児島県弁護士会
会長 新納 幸辰
宮崎県弁護士会
会長 松田 幸子
沖縄弁護士会
会長 加藤   裕
香川県弁護士会
会長 白井 一郎
愛媛弁護士会
会長 田所 邦彦