本年9月12日、東京拘置所において、1名に対して死刑が執行された。

 日本弁護士連合会は、本年2月12日、谷垣法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。

 しかし、その直後である同月21日、3名に対して死刑が執行され、しかも、同年4月26日には2名に対して死刑が執行された。

 そこで、当会としても、各死刑執行後、これらに強く抗議し、併せて死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しに関して広く国民に開かれた議論が尽くされるまでの一定期間、死刑執行を停止することを求める旨の会長声明を発してきた。

 ところが、政府は、これらを一切無視して、死刑制度について公に議論する場すら設けず、ついに、本年だけで3回目となる今回の死刑執行に至ったものであり、極めて憂慮すべき事態に陥っている。

 特に、今回の死刑執行に係る案件は、第一審で無期懲役判決であったものが、控訴審で死刑判決となり、裁判官の間でも、死刑相当か否か意見が分かれたものである。死刑制度とその運用に関する情報の公開が進まず、全社会的な議論もなされないまま、ただ死刑の執行だけが繰り返し行われているのであって、かような状況は到底容認することができない。

 周知のとおり、国際社会においては、死刑制度に対し、批判的な目が向けられており、昨年12月20日には、国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑廃止を視野にその執行を停止するよう求める決議が、過去最多の111か国もの賛成多数で可決された。加えて、本年5月31日には、国連拷問禁止委員会の総括所見が発表され、我が国は死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けたばかりである。

 当会は、今回の死刑執行に対して、政府に対し、強く抗議するとともに、全ての死刑囚に対する死刑執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、法務省に有識者会議を設置する等の方策をとることによって、死刑制度の廃止について全社会的議論を開始することを求めるものである。

2013(平成25)年9月26日
島根県弁護士会
会長 大野 敏之