本年12月12日、東京拘置所及び大阪拘置所において、それぞれ1名に対して死刑が執行された。谷垣禎一法務大臣が2012(平成24)年12月に就任して以降1年も経過しないうちに、4度目の死刑執行であり、合計8名に対して死刑執行が命じられたことになる。

 死刑は、かけがえのない生命を奪い、人間の存在を完全に否定するという非人道的な刑罰であり、また、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪うという取り返しのつかない刑罰であるという問題点を内包している。いわゆる免田事件、財田川事件、松山事件及び島田事件という4つの死刑確定事件に対する再審無罪判決、また、いわゆる足利事件及び布川事件という両無期懲役刑確定事件に対する再審無罪判決が示すとおり、死刑判決事件を含む重大事件において誤判の可能性が存在することは客観的な事実であり、このことは、刑事裁判における冤罪の危険性を如実に示している。

 国際的に見ても、2012(平成24)年現在の死刑廃止国(10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国を含む。)は140か国、死刑存置国は58か国であって、世界の3分の2以上の国々が死刑を廃止又は事実上廃止している。かつ、死刑存置国のうち、2012(平成24)年に実際に死刑を執行した国は、我が国を含め21か国にすぎなかった。このように、死刑の廃止は世界の潮流であり、我が国は、この世界の潮流に反している。

 また、国連拷問禁止委員会は、2007(平成19)年5月、我が国を含む拷問禁止条約締結国に対し、「死刑の執行をすみやかに停止」することを勧告し、国連総会本会議でも、2007(平成19)年、2008(平成20)年、2010(平成22)年及び2012(平成24)年の4回にわたり、死刑存置国に対して死刑執行の停止を求める決議を採択している。加えて、本年5月31日には、国連拷問禁止委員会の総括所見が発表され、我が国は、死刑制度を廃止する可能性についても考慮するよう勧告を受けた。このような国際社会からの強い要請からしても、死刑の執行は停止されなければならない。

 日本弁護士連合会は、死刑のない社会を見据えて、2011(平成23)年10月7日、第54回人権擁護大会において「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し、本年2月12日、谷垣禎一法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出した。

 当会としても、本年2月21日の3名に対する死刑執行、同年4月26日の2名に対する死刑執行及び同年9月12日の1名に対する死刑執行に対し、各執行後、これらに強く抗議し、併せて死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しに関して広く国民に開かれた議論が尽くされるまでの一定期間、死刑執行を停止するよう求める旨の会長声明を発してきた。

 当会は、こうした状況において、何らの配慮もせずなされた今回の死刑執行を到底容認することができない。

 当会としては、改めて政府に対し、死刑制度の存廃を含む国民的議論を開始し、それに基づいた施策が実施されるまで、一切の死刑執行を停止することを強く要請するものである。

2013(平成25)年12月17日
島根県弁護士会
会長 大野 敏之