当会は、2014(平成26)年3月27日、「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」を公表し、政府が、集団的自衛権行使に関する従来の確立した政府解釈を閣議決定により変更しようとしていることに強く反対を表明した。

 ところが、安倍晋三首相は、2014(平成26)年6月10日、自由民主党の高村副総裁に対し、集団的自衛権行使を限定的に容認する新たな憲法解釈を盛り込んだ閣議決定を同月22日までの今国会中に行うため、公明党との与党協議を急ぐよう指示し、同月17日には、与党協議において、政府から閣議決定の文案が提示された。

 日本国憲法は、前文において平和的生存権を宣言し、第9条において、戦争を永久に放棄し、戦力を保持せず、交戦権も認めないとする絶対的平和主義を宣言しており、非戦・非軍事の恒久平和主義を宣言しているという点で、世界の憲法の中でも先駆的な意義を有している。

 そして、これまで政府は、一貫して、憲法第9条下における自衛権の行使は我が国を防衛するための必要最小限の範囲にとどまるべきであり、個別的自衛権の行使に限定されると解し、我が国が直接武力攻撃を受けていない場合に問題となる集団的自衛権の行使は憲法上許されないと解してきた。したがって、長年の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認することは、たとえ限定的な容認にとどまるとしても、日本国憲法の定める平和主義の根幹に関わる重大な変更である。

 政府が、国際情勢の変化等によりどうしても集団的自衛権の行使を認める必要があると判断するのであれば、解釈による改憲ではなく、現行憲法が定める憲法改正の手続きによって、各議院、さらには、国民に対し、政府の判断の当否を問うべきである。  

 憲法の基本原理の根幹に関わる重大な変更を、憲法改正手続によることなく、時の政権の判断で行われる閣議決定により憲法解釈の変更として行うことは、国民の人権を保障するために国家権力を制限するという立憲主義に反し、憲法の最高法規性をないがしろにするものであり、到底認めることはできない。さらに、政府は、与党間の協議すら不十分な状況にも関わらず、短期間で与党協議を決着させて閣議決定を行おうとしており、その行為は決して許されるものではない。  

 当会は、重ねて、集団的自衛権行使に関する政府解釈を閣議決定により変更することに強く反対する。

2014(平成26)年6月19日
島根県弁護士会
会長 射場 か よ 子