1.  政府は本年7月1日、臨時閣議によって、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。そして、今後、自衛隊法や武力攻撃事態法などの改正が進められようとしている。  
     これまで政府は、集団的自衛権の行使について、「憲法上許されない」旨を表明(昭和56年5月29日政府答弁書)し、その解釈を一貫して維持してきたにもかかわらず、国会における議論も、十分な国民的議論も行わないまま、多くの国民の反対を押し切って、国民の将来に重大かつ死活的影響を与える憲法解釈の変更をしようというものであり、我が国の憲政史上まれにみる異常な事態と言わざるを得ない。
  2.  日本国憲法は、前文において「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とともに、第9条によって戦争の放棄、戦力の不保持及び交戦権の否認をしており、かかる憲法の下では外国での武力行使が可能となる集団的自衛権の行使が認められないことは明白である。

  3.  日本弁護士連合会は、集団的自衛権の行使は、憲法の基本原理である恒久平和主義を後退させ、すべての基本的人権の基盤となる平和的生存権を損なうものであることから、これまで、一貫して反対の意思を表明してきており、本年5月30日の第65回定期総会でも、「重ねて集団的自衛権の行使容認に反対し、立憲主義の意義を確認する決議」を行っているところである。解釈変更によって集団的自衛権の行使を容認する動きに対しては、当会も含めた全国52の全ての弁護士会も、会長声明、意見書等により反対意思の表明を行っている。閣議決定は、これらの反対の意思をも無視して行われたものである。

  4.  憲法改正手続を行うことなく、政府自身によって、日本国憲法の基本原理の一つである恒久平和主義にかかわる部分の実質的な内容を変更するこのたびの閣議決定は、憲法をもって国家権力の恣意的行使を制限し国民の自由を保障するという立憲主義の理念に反するものであって、到底容認することはできない。

  5.  なお、安倍総理大臣は、集団的自衛権は「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に限って、「必要最小限度の武力行使」を認めるにすぎない、とあくまで限定的な範囲での行使に過ぎないということを繰り返し強調している。しかし、これらの文言は極めて曖昧で、時の政府の考え一つでいかようにも拡大解釈が可能になるため、歯止めとなり得ないし、限定的な範囲での行使であることが、政府解釈により集団的自衛権行使を容認する理由とならないことは言うまでもない。

  6.  島根県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を目指す組織として、憲法解釈の変更により集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に強く反対し撤回を求めるものである。

     以上のとおり決議する。 

2014(平成26)年8月1日
島根県弁護士会臨時総会