2015(平成27)年6月25日,名古屋拘置所において,1名に対して死刑が執行された。上川陽子法務大臣による初めての死刑執行であり,第2次安倍内閣以降,死刑が執行されたのは2014(平成26)年8月以来7回目で,合わせて12人になる。本件は,弁護人が被執行者の控訴の取下げ無効を主張していた事案であり,また再審請求の準備中であった。このような状況における死刑の執行は極めて遺憾であり,当会は改めて死刑執行に強く抗議する。

 死刑は,最も基本的な人権である生命に対する権利を否定する究極の刑罰であり,ひとたび執行されてしまえば,誤判に基づき死刑判決がなされた場合には,取り返しがつかない。

 いわゆる免田事件,財田川事件,松山事件及び島田事件という4つの死刑確定事件に対する再審無罪判決,また,いわゆる足利事件及び布川事件という無期懲役刑確定事件に対する再審無罪判決が示すとおり,死刑判決を含む重大事件においても誤判の可能性が存在することは客観的な事実である。

 更に,2014(平成26)年3月27日には,静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について,再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。この,いわゆる袴田事件の再審開始決定がなされたことは,死刑確定事件であっても冤罪の疑いの強い事件が,現在でも,なお,存在することを一層明らかにしている。

 日本弁護士連合会は,2011(平成23)年10月7日,第54回人権擁護大会において,「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め,死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」を採択し,政府に対し,死刑制度の廃止に関する全社会的議論を求めるとともに,議論が尽くされる間の死刑の執行の停止,議論に必要な死刑制度とその運用に関する情報公開を求めてきた。

 当会も,これまで,再三にわたり,政府による死刑執行に抗議し,死刑執行の停止を求めてきたところである。

 当会は,今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに,政府に対し,改めて,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しに関する,真に,広く国民に開かれた全社会的議論の開始を求めるとともに,議論が尽くされるまでの間,死刑執行を停止するよう,強く求めるものである。

2015(平成27)年6月29日
島根県弁護士会
会長 熱田 雅夫